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    監督/脚本

    大友啓史

    スペシャルインタビュー

    1966年生まれ、岩手県出身。慶應義塾大学法学部卒業。1990年にNHKに入局し、連続テレビ小説「ちゅらさん」シリーズ(01〜04)、「ハゲタカ」(07)、 「白洲次郎」(09)、大河ドラマ「龍馬伝」(10)などを演出、イタリア賞はじめ国内外の賞を多数受賞する。2009年、『ハゲタカ』で映画監督デビュー。2011年5月に独立し、『るろうに剣心』(12)、『プラチナデータ』(13)、『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』(14)の2部作を手がける。『るろうに剣心』シリーズは世界50か国以上で公開され、3部作の累計興行収入が125億円を突破、大ヒットとなる。その後も、『秘密 THE TOP SECRET』『ミュージアム』 (16)、『3月のライオン 前編/後編』(17)、『億男』(18)、『影裏』 (20)と話題作を次々と世に送り出す。2017年より、「OFFICE Oplus」を新たに立ち上げ、海外での映像制作も視野に活動を広げている。

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『京都大火編』『伝説の最期編』から5年。再び撮影で滋賀県を訪れた時のお気持ちをお聞かせください。

滋賀ロケーションオフィスは、いつも万全の態勢で迎え入れてくださると同時に、作品の世界観をしっかり理解していただいています。

ロケ地は『るろうに剣心』の制作スタッフを通じていくつか紹介してもらうのですが、候補地はすべて直接見てみたいと思える場所ばかり。撮影申請やスケジュール調整なども含め、制作スタッフと現地スタッフでしっかりと役割分担ができています。

今作の『The Final』『The Beginning』の撮影でも息の合った連携を見せてくれたので、非常に良いコンディションで準備ができました。

私が「良い画を撮る」ことだけに集中できているのは、これまで積み重ねてきた信頼の証。滋賀県の皆さんはいつもチーム『るろうに剣心』、そして「大友組」の一員だと思っています。

  • 滋賀県のロケ地で印象に残っているエピソードは?

    シリーズ1作目に遡りますが、冒頭の戊辰戦争の戦闘シーンを撮影した「三井寺」境内の奥にある竹林。石段や石垣といった歴史を感じさせるものが今も残り、周りには現代物が一切ない。制作陣との下見であの場所を発見した時、冒頭シーンのイメージが一気に湧いてきたのを覚えています。

    しかも、撮影したのは2011年の8月2日から4日。つまり、クランクインして最初に撮影した場所でもあるのです。

    「三井寺」は、後に続くシリーズのテイストと制作スタッフ達の作品に向かう“本気度”を決定付けた場所。その意味でも、映画『るろうに剣心』を生み出した地と言っても過言ではありません。

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  • ほかにも、忘れられないスポットが数多くあります。「安楽律院」は最高のロケーションでした。1作目のクライマックスとなった剣心と鵜堂刃衛の決闘の場ですし、そこからさらに先へ進んだ場所に、3作目で登場した比古清十郎の住処を飾らせていただきました。作品の重厚なテイストを後押ししてくれた大切な場所です。

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  • 『The Beginning』で採用した「油日神社」も、私が求めていたシーンにふさわしい場所。剣心が高杉晋作の奇兵隊の入隊試験を受け、“人斬り抜刀斎”が誕生した地です。あの広大な敷地を目の当たりにした時、エキストラを何人集めて、どのような画をつくっていこうかと胸が高鳴りました。

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  • 新選組屯所の表として使わせていただいた「坂本の石垣のまちなみ」も、撮影自体は狭い範囲でしたが、あの1カットがあるかないかで屯所のイメージが全く変わってくる。実際、新選組が幕末の時代に詰めていた場所を取材で訪ねたこともあり、坂本のあの場所は理想とする屯所のイメージにとても近い印象でした。

    やはり、場所の力というのはすごい。ステージングを含めたイメージが一気に膨らみます。また、映画を鑑賞する皆さんにとっても、「ここで何かが起きそうだ」と想像をかき立てられるのではないでしょうか。

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  • 「三井寺」と言えば、1作目でたびたび登場する石橋も印象深い舞台の一つです。

    「三井寺」の石橋は、作品の初期設定で神谷道場に近い場所として位置付けています。1作目では薫と鵜堂刃衛が対峙し、剣心が間一髪で救出するという重要な場面などで採用しました。

    実は、今作の『The Final』でもあの石橋が登場します。過去作の印象もあり、ファンの皆さんの記憶にも刻まれているのではないかと思い、あえて同じ場所を使わせていただきました。しかも、あの恐怖がフラッシュバックするようなシーンで……。

    シリーズものの強みは、ファンの皆さんの中に刻まれている記憶を活かせるということ。過去作で同じ場所を何度も採用していることで、「あの石橋は道場の近所だな」と察していただいている方も多いのではないでしょうか。

    「三井寺」の石橋は、ファンの皆さんにとっては印象深いロケーションだと思いますし、我々にとっては思い入れが強い場所なのです。

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  • シリーズ全作の中で最も記憶に残っているシーンは?

    沢山あって挙げるのが難しいですが、2作目の四乃森蒼紫と翁の対峙は、最も心が動いたシーンの一つ。年齢差のある2人の対峙は緊迫感がものすごく伝わり、闘う男の色気も感じられました。特に、蒼紫が魅せた長剣と短剣の二刀流は極めて難しい技術ですが、不可能を可能にしてくれたという意味で鮮烈に覚えています。

    その一連のドラマの終着点を迎えたのが、3作目の「日野城跡」での剣心と四乃森蒼紫の決闘シーン。剣心に敗れた蒼紫、最期を迎えた翁、尊敬していた蒼紫が敗れて大好きな翁を失った操。「早く行ってください。日本の未来はあなたのその剣に!」という黒尉のセリフに背中を押され、東京に歩みを進める剣心。

  • 「日野城跡」での剣心と四乃森蒼紫の決闘シーン 画像

  • 御庭番衆という役割を果たしてきた一族にとって、いわば一時代の終焉を迎える重要なシーンで、四人の濃密な感情をどのように表現していこうかとこだわって見つけた「日野城跡」は、忘れられない場所の一つです。

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シリーズ全作を振り返っての感想はいかがですか?

シリーズを撮り続けていると、そのたびにスタッフやキャストの目標とするハードルが上がっていくものです。それが5年も期間が空くと、なおさらです。前作が過去の産物になると、その思い出が日を追うごとに美化されていくからです。

「前作は良い作品ができたけど、次作はもっとすごい作品ができるんじゃないか」。そこに確信や明確な基準はありませんでしたが、前作を超えられるのか自問自答を繰り返しました。10年という月日をかけて積み上げてきた映画『るろうに剣心』への自負と、さらに素晴らしい作品をつくりたいという探求心の間でせめぎ合っていました。

そうした心情の中で導き出した答えが、「本物を見せていく」というシリーズの本質。原点に立ち返り、作品を見つめ直し、すべてのディテールにわたって、本気で突き詰めていきました。

改めて、滋賀県の魅力を教えてください。

滋賀県はおいしい食べ物が本当に多い。近江牛のステーキ丼をはじめ、地元食材がふんだんに使われたロケ弁もおいしくて毎日楽しみでした。今作でも現地の方々からおいしい差し入れをたくさんいただきましたし、個人的にも大好きな『初雪食堂』に、何度か足を運ぶことができました。

今作の撮影もかなりハードでしたが、疲れ切っていたスタッフたちを労うために近江牛のおいしいすき焼き屋さんに連れて行くと、みんなが山ほど食べて……。「あれが食べられるんだったら、もうひと頑張りしよう!」と思える、一発逆転できる絶品グルメがロケ地にあるというのは本当に強いなと、改めて感じましたね(笑)。

  • ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

    まず、滋賀県は私の好みや感覚にフィットする土地。滋賀の人々がその場所をどのように捉え、どのように考え、どのように思って暮らしてきたのか。そうしたことが、私なりの感度、尺度で少し理解できるような気がするのです。

    滋賀県のどのまちにも古刹や名刹が数多く点在していますが、それらの多くが恭しい存在ではなく、人々の暮らしに根付き、呼吸をしているかのような感覚に陥ります。

    実は、NHK時代にドラマ『白洲次郎』に脚本・監督として携わっていた頃、白洲次郎さんの妻・白洲正子さんの随筆『かくれ里』を読み、滋賀県という場所に特別な想いを秘めていたのです。

    正子さんの言葉を借りれば、陶器は棚に飾るのではなく、ひび割れようが壊れようが、日々の暮らしの中で使うことに意味がある、と。そこに人の痕跡が残っているからこそ、“生活の実感”や人の“歴史”、“匂い”が加わり、魅力的に映るのです。

    それと同じように、滋賀に残る様々な風景が、映画『るろうに剣心』の物語や舞台設定によりリアリティをもたらしてくれています。『るろうに剣心』シリーズはフィクションの中に、ロケ地周辺で暮らす人々の生活感やその匂いが加わることで、良い方向に作用している気がします。ぜひ皆さんもロケ地の滋賀県を訪れて、そのような部分を感じながら作品を楽しんでいただきたいと思います。

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